
最初に立派な仕様書がある。
画面設計がある。
機能一覧がある。
スケジュールがある。
それに沿って、順番に作っていく。
もちろん、それが正しい開発なのだと思います。
でも、私の場合は、もう少し散らかっています。
だいたい、「なんか違う」から始まります。
この言葉は硬い。
この画面は冷たい。
このボタンは押したくならない。
この説明だと伝わらない。
この診断結果は、少し責められている感じがする。
この返信案は丁寧だけど、店の顔が見えない。
そういう小さな違和感が、あちこちに落ちています。
開発会社にFRONTCASTを依頼したとしたら、たぶんもっと早く、もっときれいに作れたと思います。
画面も整っていたかもしれない。
仕様書も立派だったかもしれない。
進行管理もスムーズだったかもしれない。
それは本当にそうだと思います。
ただ、きれいに作ることと、現場の嫌な感じを拾うことは、少し違います。
商売の現場では、この「なんか違う」がとても大事です。
お客様が帰ったあと、
「なんか今日は空気が重かったな」
と感じる。
新しいPOPを置いたけど、
「なんか読まれていない気がする」
と思う。
スタッフの声かけを聞いて、
「間違ってはいないけど、なんか冷たいな」
と感じる。
数字にはすぐ出ません。
でも、印象には出ます。
そして、その印象のズレが積み重なると、店は少しずつ弱くなります。
FRONTCASTを作りながら、私はずっとそれを見ていました。
店の人が使った時に、少し安心する画面でないといけない。
返信案が出てきた時に、自分の言葉として整えられる余地がないといけない。
診断結果を見た時に、責められているのではなく、一緒に店先を整えてもらっている感じがないといけない。
この違いは、仕様書だけではなかなか書きにくい。
「もっと温かく」
「でも甘くしすぎず」
「責めずに気づかせる」
「AIっぽくしない」
「店主が自分の言葉に戻せる余白を残す」
言葉にすると簡単そうですが、作るとなると難しい。
そして、こういう曖昧なことを言い出す人間は、開発現場ではだいたい面倒です。
私が開発者なら、たぶん少し嫌です。
「もっと温かく」と言われても、温度計で測れません。
でも、店の現場では、その温度が大事なのです。
私が開発する理由は、そこにあります。
開発会社にはできない現場の隙間を埋めたい。
きれいなサービス紹介文より、現場で感じた小さな引っかかりのほうが、案外プロダクトの芯になることがあります。
「なんか違う」を放っておかない。
その積み重ねで、FRONTCASTは少しずつ形になっていきました。
ぐちゃぐちゃです。
でも、現場から生まれる道具は、たぶん少しくらいぐちゃぐちゃでいい。
そのぐちゃぐちゃの中に、店の人にしか分からない本当の使いやすさがあると思っています。